古典個展 大阪大名誉教授・加地伸行 「退かない」プーチン老 産経新聞 2022/8/21
中国に造詣の深い加地伸行氏の連載から引用しました。加地教授は、論語、孟子、史記など中国の古典を長年研究されてきたその道の碩学です。酒楽は、加地教授の古典個展を毎回楽しみにしているものです。
今回、古典個展を引用したのは、以下の下りが目についたからです。
『論語』衛霊(えいのれい)公に「遠き〔先(さき)〕の慮(おもんぱかり)(配慮)なくば、必ず近き憂(うれ)いあり」とある。準備は、なにも起こっていない時にこそしておくべきである。わけても軍事というのは、その準備に時間がかかるので、相当の時間を充(あ)てなくてはならない。
その準備の中で最も時間がかかるのが、将兵という人間の準備である。将官は、長時間の訓練が必要なので、日本は防衛大学校のさらなる充実と定員増を図らなくてはならない。
問題は兵である。ただ数を集めればよいというわけではない。相当の訓練が必要なのである。もしそういった配慮がなくて、ただやたらと人数を集めて部隊を編成しても、実際は役に立たず、戦闘(防衛)能力が低く、無(な)いに等しい。
この主張は非常に重要な指摘です。軍事には時間がかかる、これですね。将校、将官を育成するためには、士官学校~兵種学校~軍大学~参謀本部勤務など、様々な教育と実務を経ることが必要です。部隊勤務はさらに重要です。こうして、有能な将官を育成するわけです。士官学校から考えれば、優に三十年から四十年の育成期間があるわけです。
余談を。やる気はないが有能なものは大部隊の指揮官に向いている、やる気も能力もあるものは参謀に向いている、やる気も能力もないものは兵に向いている、やる気はあるが能力の無いものは速やかに銃殺すべし、という言葉があります。ドイツのモルトケの言葉と伝えられています。
さしづめ日露戦争における大山元帥と児玉総参謀長の関係などはその最たるものかと愚考する次第です。
それだけ優秀な将官・指揮官を育成するのは時間がかかり、多大の努力が必要だということなのです。まさしく国家の命運を左右する国の宝とも言うべきものが将官なのです。
兵についても同じです。特に現代技術の粋を集めて製造された最新兵器を操るためには、これもまた膨大な時間を必要とします。よく徴兵制を絶対許さない、という左翼の主張を聞きますが、現代の戦争で、徴兵制ほど時代錯誤なものはありません。
最前線の普通科隊員と雖も、小銃、機関銃、迫撃砲、それらを使用するための訓練時間は膨大なものです。素人の人間を連れてきて、簡単に隊員になれるものではないのです。
だから時間がかかるのです。装備品についても同じです。先ごろ、次期戦闘機の製造を日英共同開発するという政府の発表がありましたが、それまでに基礎研究から試作機の試験飛行まで、十年以上の歳月が費やされているのです。これから実用化のための設計・開発に入ると思われますが、当然紆余曲折が予想され、結構な時間がかかるでしょう。
これが軍事というものです。人も物も作るまでに膨大な時間と努力が必要なのです。だから、早ければ早いほどいいのです。着手するのが。予算をいっぱいつけるからよろしく、でできるわけがありません。
「百年兵を養うは一日これを用いんがためである」
これは山本五十六の言葉です。軍隊というものを簡潔明瞭に示している名言です。百年兵を養う必要があるのです。
中国に造詣の深い加地伸行氏の連載から引用しました。加地教授は、論語、孟子、史記など中国の古典を長年研究されてきたその道の碩学です。酒楽は、加地教授の古典個展を毎回楽しみにしているものです。
今回、古典個展を引用したのは、以下の下りが目についたからです。
『論語』衛霊(えいのれい)公に「遠き〔先(さき)〕の慮(おもんぱかり)(配慮)なくば、必ず近き憂(うれ)いあり」とある。準備は、なにも起こっていない時にこそしておくべきである。わけても軍事というのは、その準備に時間がかかるので、相当の時間を充(あ)てなくてはならない。
その準備の中で最も時間がかかるのが、将兵という人間の準備である。将官は、長時間の訓練が必要なので、日本は防衛大学校のさらなる充実と定員増を図らなくてはならない。
問題は兵である。ただ数を集めればよいというわけではない。相当の訓練が必要なのである。もしそういった配慮がなくて、ただやたらと人数を集めて部隊を編成しても、実際は役に立たず、戦闘(防衛)能力が低く、無(な)いに等しい。
この主張は非常に重要な指摘です。軍事には時間がかかる、これですね。将校、将官を育成するためには、士官学校~兵種学校~軍大学~参謀本部勤務など、様々な教育と実務を経ることが必要です。部隊勤務はさらに重要です。こうして、有能な将官を育成するわけです。士官学校から考えれば、優に三十年から四十年の育成期間があるわけです。
余談を。やる気はないが有能なものは大部隊の指揮官に向いている、やる気も能力もあるものは参謀に向いている、やる気も能力もないものは兵に向いている、やる気はあるが能力の無いものは速やかに銃殺すべし、という言葉があります。ドイツのモルトケの言葉と伝えられています。
さしづめ日露戦争における大山元帥と児玉総参謀長の関係などはその最たるものかと愚考する次第です。
それだけ優秀な将官・指揮官を育成するのは時間がかかり、多大の努力が必要だということなのです。まさしく国家の命運を左右する国の宝とも言うべきものが将官なのです。
兵についても同じです。特に現代技術の粋を集めて製造された最新兵器を操るためには、これもまた膨大な時間を必要とします。よく徴兵制を絶対許さない、という左翼の主張を聞きますが、現代の戦争で、徴兵制ほど時代錯誤なものはありません。
最前線の普通科隊員と雖も、小銃、機関銃、迫撃砲、それらを使用するための訓練時間は膨大なものです。素人の人間を連れてきて、簡単に隊員になれるものではないのです。
だから時間がかかるのです。装備品についても同じです。先ごろ、次期戦闘機の製造を日英共同開発するという政府の発表がありましたが、それまでに基礎研究から試作機の試験飛行まで、十年以上の歳月が費やされているのです。これから実用化のための設計・開発に入ると思われますが、当然紆余曲折が予想され、結構な時間がかかるでしょう。
これが軍事というものです。人も物も作るまでに膨大な時間と努力が必要なのです。だから、早ければ早いほどいいのです。着手するのが。予算をいっぱいつけるからよろしく、でできるわけがありません。
「百年兵を養うは一日これを用いんがためである」
これは山本五十六の言葉です。軍隊というものを簡潔明瞭に示している名言です。百年兵を養う必要があるのです。
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