中・台両国最高指導者の対照的な行動である。両国と表現すると、台湾を国家として認めたことになり、中国が絶対に認めない語句である。中国報道官の記者会見はだから面白い。
習近平は、戦争準備に全力を、と発言しているようだ。些か物騒な発言である。この辺にも中共の苦しさが現れている。
この中で注目されるのは、習が、軍に対して、党の絶対的な領導を堅持するべき、及び党に対する絶対忠誠を求めたところにある。ソ連共産党が、軍内部に政治士官を配置し、軍を政治的に支配したのと軌を一にする。ソ連と中国に共通するのはこの点だ。ソ連軍も人民解放軍も国家ではなく、共産党に対して忠誠を誓うのだ。党の私兵なのだ。つまり、ソ連も中国も、共産党が人民を支配しているのだ。
西側民主主義国家の軍とは、ここが決定的に異なる。米軍も自衛隊も、国家に忠誠を誓っている。自民党でも立憲民主党でもない。政治的に中立であり、シビリアンコントールが徹底されている。そして、政治的活動は禁止されている。これが近代国家の軍だ。
習は、軍の士気を鼓舞したのだろうが、そこには、中国の苦境が透けて見える。トランプの攻勢を辛うじて凌いでいるが、デカップリングの可能性がちらつき始め、中国の先端企業の経済活動に制裁を加えられ、中国は、経済的に追い詰められている。
さらに、ポンペイオ国務長官が、日本で、日米豪印(クワッド)連合外相会議を主催し、中国を圧迫した。8月には、日米海空軍連合のプレゼンスを見せつけられて、苦し紛れに中距離弾道弾を発射して、見得を切った。
欧州も愈々中国に見切りをつけ始めた。ドイツでさえ、自由で開かれたインド太平洋構想に賛意を示したのだ。中国の反対を押し切って。中国の王毅外相は、クワッドをアジア版NATOだと言い、強烈な不満と反対を表明した。何だ、我が国の遺憾砲と同じではないか。
近来の中国の経済的発展は、非対称戦略を根底から覆し、海洋国家と正面から戦うことになった。中国の土俵ではない。毛沢東は、その点は賢かった。自国の力の限界を冷静に認識し、「負けない戦略」を選択したのだ。もちろん、そのために自国民には貧困生活を余儀なくさせたのだが。
共産主義を標榜しながら、「白い猫も黒い猫も、ネズミをとる猫はいい猫だ」という、鄧小平の現実主義に転換し、人民の生活を向上させた。そのため、国家としては脆弱になった。どちらも達成することはできない。経済をとるのであれば、米国の軍門に下らざるを得ない。それがいやで、覇権主義に走ったが、世界から孤立し、中国の将来は風前の灯火だ。
習は、共産党内部での政争には勝利しつつあるが、国際的孤立を招き、政敵は習の失策を予想して、蠢き始めている。習の危機感とはそれなのだ。何としても米中覇権争いに勝たなければならないのだ。負ければ、失脚と粛清が待っている。独裁者の宿命だ。
5月28日、全人代後の記者会見で、李克強が、「中国には月収1000元(約1万5000円)の人が6億人もいる」と明らかにした。
これなど、明らかに習近平への当てつけだ。しばらく鳴りを潜めていたが、中国が国際的に孤立しつつある現在、反撃の狼煙を上げたような気配がする。李率いる共産主義青年団、通称「団派」が巻き返しに出ている可能性がある。団派の次代のホープ胡春華は、黙々と職務を全うしている。習の目を逃れて落馬しなかったのはさすがだ。
政敵は、虎視眈々と習の失政を待っている。今年の北戴河会議は何とか乗り切ったようだ。だが、仮にトランプが2期目の大統領に就任すれば、米中の覇権争いは、さらに激化するだろう。アメリカに負け続けている中国は、これ以上の後退は許されない。経済的にも軍事的にも劣勢に立たされれば、習の中共内における立場・権力は怪しくなってくる。
習が生き残るためには、少なくともアメリカに負けないことだ。だが、それは至難の技だが。
胡錦濤が、あっさりと習近平に権力を譲ったのは、こうなることを見越していたからだ、という都市伝説は、当たっているかもしれない。全ての権力を握るということは、全ての責任を負うということに他ならないからだ。米中覇権戦争の行方は、当然、中共内の権力闘争に直結する。数年後に誰が生き残っているのか、興味は尽きない。
中台の両指導者が同日軍施設を視察、習近平氏「戦争準備に全力を」
2020年10月14日 16時31分 大紀元
中国の習近平国家主席は10月13日、広東省東部潮州市を視察し、同市に駐屯する海軍陸戦隊基地を訪ね、「戦争への備えに全精力を注ぐよう」などと発言した。南シナ海など各海域で、中国軍が挑発行為を繰り返している中、習近平氏の中国版海兵隊の視察は注目を集めた。一方、同日、台湾の蔡英文総統は、国軍の軍事防御基地を視察した。
中国メディアによると、13日午前、習近平氏が海軍陸戦隊を訪問した際、「海軍陸戦隊は陸・海の精鋭部隊である。国家の主権安全と領土、国家の海洋権益、国家の海外利益を守ることに重要な責任を負っている」と述べた。習氏は、「新時代の党の強軍思想」と「新時代の軍事戦略方針」を徹底的に行うことを強調した。
また、習氏は同部隊の兵士らに対して「戦争への備えに全精力を注ぎ、高度な厳戒態勢を保つように」と指示し、訓練レベルや実戦能力を高めるよう求めた。
同氏は「軍に対する党の絶対的な領導を堅持するよう」と要求し、「(党に対する)軍の絶対的な忠誠を確保しなければならない」とした。
時事評論家の沈舟氏は大紀元への寄稿で、習近平氏の発言は「危険なシグナルだ」と批判した。「中国当局の台湾への武力侵攻や南シナ海における軍事拡張の企み、太平洋で覇権を狙う野心を反映した」と指摘した。
一方、9月以降、中国軍の戦闘機や爆撃機などが頻繁に台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入したことを受けて、台湾の蔡英文総統は13日、楽山レーダー基地を訪れ、空軍の「偵察捜査早期警戒センター」と防空部隊を視察した。
総統は、海抜2620メートルの山の上に駐屯し、台湾の国家安全を守る兵士に対して「感謝する」と述べた。また、「近隣諸国は最近、ミサイルやロケット弾の実験を数回行った。空軍の偵察捜査早期警戒センターはこれらの動きが迅速にできた」と称えた。蔡総統は、同センターと他の国軍部隊との連携で、台湾は「必ず、空からの脅威を防衛できる」と中国軍を念頭に述べ、兵士らを激励した。
(翻訳編集・張哲)
(引用終わり)
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習近平は、戦争準備に全力を、と発言しているようだ。些か物騒な発言である。この辺にも中共の苦しさが現れている。
この中で注目されるのは、習が、軍に対して、党の絶対的な領導を堅持するべき、及び党に対する絶対忠誠を求めたところにある。ソ連共産党が、軍内部に政治士官を配置し、軍を政治的に支配したのと軌を一にする。ソ連と中国に共通するのはこの点だ。ソ連軍も人民解放軍も国家ではなく、共産党に対して忠誠を誓うのだ。党の私兵なのだ。つまり、ソ連も中国も、共産党が人民を支配しているのだ。
西側民主主義国家の軍とは、ここが決定的に異なる。米軍も自衛隊も、国家に忠誠を誓っている。自民党でも立憲民主党でもない。政治的に中立であり、シビリアンコントールが徹底されている。そして、政治的活動は禁止されている。これが近代国家の軍だ。
習は、軍の士気を鼓舞したのだろうが、そこには、中国の苦境が透けて見える。トランプの攻勢を辛うじて凌いでいるが、デカップリングの可能性がちらつき始め、中国の先端企業の経済活動に制裁を加えられ、中国は、経済的に追い詰められている。
さらに、ポンペイオ国務長官が、日本で、日米豪印(クワッド)連合外相会議を主催し、中国を圧迫した。8月には、日米海空軍連合のプレゼンスを見せつけられて、苦し紛れに中距離弾道弾を発射して、見得を切った。
欧州も愈々中国に見切りをつけ始めた。ドイツでさえ、自由で開かれたインド太平洋構想に賛意を示したのだ。中国の反対を押し切って。中国の王毅外相は、クワッドをアジア版NATOだと言い、強烈な不満と反対を表明した。何だ、我が国の遺憾砲と同じではないか。
近来の中国の経済的発展は、非対称戦略を根底から覆し、海洋国家と正面から戦うことになった。中国の土俵ではない。毛沢東は、その点は賢かった。自国の力の限界を冷静に認識し、「負けない戦略」を選択したのだ。もちろん、そのために自国民には貧困生活を余儀なくさせたのだが。
共産主義を標榜しながら、「白い猫も黒い猫も、ネズミをとる猫はいい猫だ」という、鄧小平の現実主義に転換し、人民の生活を向上させた。そのため、国家としては脆弱になった。どちらも達成することはできない。経済をとるのであれば、米国の軍門に下らざるを得ない。それがいやで、覇権主義に走ったが、世界から孤立し、中国の将来は風前の灯火だ。
習は、共産党内部での政争には勝利しつつあるが、国際的孤立を招き、政敵は習の失策を予想して、蠢き始めている。習の危機感とはそれなのだ。何としても米中覇権争いに勝たなければならないのだ。負ければ、失脚と粛清が待っている。独裁者の宿命だ。
5月28日、全人代後の記者会見で、李克強が、「中国には月収1000元(約1万5000円)の人が6億人もいる」と明らかにした。
これなど、明らかに習近平への当てつけだ。しばらく鳴りを潜めていたが、中国が国際的に孤立しつつある現在、反撃の狼煙を上げたような気配がする。李率いる共産主義青年団、通称「団派」が巻き返しに出ている可能性がある。団派の次代のホープ胡春華は、黙々と職務を全うしている。習の目を逃れて落馬しなかったのはさすがだ。
政敵は、虎視眈々と習の失政を待っている。今年の北戴河会議は何とか乗り切ったようだ。だが、仮にトランプが2期目の大統領に就任すれば、米中の覇権争いは、さらに激化するだろう。アメリカに負け続けている中国は、これ以上の後退は許されない。経済的にも軍事的にも劣勢に立たされれば、習の中共内における立場・権力は怪しくなってくる。
習が生き残るためには、少なくともアメリカに負けないことだ。だが、それは至難の技だが。
胡錦濤が、あっさりと習近平に権力を譲ったのは、こうなることを見越していたからだ、という都市伝説は、当たっているかもしれない。全ての権力を握るということは、全ての責任を負うということに他ならないからだ。米中覇権戦争の行方は、当然、中共内の権力闘争に直結する。数年後に誰が生き残っているのか、興味は尽きない。
中台の両指導者が同日軍施設を視察、習近平氏「戦争準備に全力を」
2020年10月14日 16時31分 大紀元
中国の習近平国家主席は10月13日、広東省東部潮州市を視察し、同市に駐屯する海軍陸戦隊基地を訪ね、「戦争への備えに全精力を注ぐよう」などと発言した。南シナ海など各海域で、中国軍が挑発行為を繰り返している中、習近平氏の中国版海兵隊の視察は注目を集めた。一方、同日、台湾の蔡英文総統は、国軍の軍事防御基地を視察した。
中国メディアによると、13日午前、習近平氏が海軍陸戦隊を訪問した際、「海軍陸戦隊は陸・海の精鋭部隊である。国家の主権安全と領土、国家の海洋権益、国家の海外利益を守ることに重要な責任を負っている」と述べた。習氏は、「新時代の党の強軍思想」と「新時代の軍事戦略方針」を徹底的に行うことを強調した。
また、習氏は同部隊の兵士らに対して「戦争への備えに全精力を注ぎ、高度な厳戒態勢を保つように」と指示し、訓練レベルや実戦能力を高めるよう求めた。
同氏は「軍に対する党の絶対的な領導を堅持するよう」と要求し、「(党に対する)軍の絶対的な忠誠を確保しなければならない」とした。
時事評論家の沈舟氏は大紀元への寄稿で、習近平氏の発言は「危険なシグナルだ」と批判した。「中国当局の台湾への武力侵攻や南シナ海における軍事拡張の企み、太平洋で覇権を狙う野心を反映した」と指摘した。
一方、9月以降、中国軍の戦闘機や爆撃機などが頻繁に台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入したことを受けて、台湾の蔡英文総統は13日、楽山レーダー基地を訪れ、空軍の「偵察捜査早期警戒センター」と防空部隊を視察した。
総統は、海抜2620メートルの山の上に駐屯し、台湾の国家安全を守る兵士に対して「感謝する」と述べた。また、「近隣諸国は最近、ミサイルやロケット弾の実験を数回行った。空軍の偵察捜査早期警戒センターはこれらの動きが迅速にできた」と称えた。蔡総統は、同センターと他の国軍部隊との連携で、台湾は「必ず、空からの脅威を防衛できる」と中国軍を念頭に述べ、兵士らを激励した。
(翻訳編集・張哲)
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