【透視中国】狼は羊になれるのか? 看中国 2021年3月9日
https://www.visiontimesjp.com/?p=15313
2021年1月28日、アメリカのシンクタンク・「大西洋評議会(The Atlantic Council)」は80ページに及ぶ報告書「より長い電報:米国の新しい対中戦略にむけて」(The Longer Telegram: Toward a new American China strategy)を発表した。当報告書は「習近平が米中関係をギクシャクさせた根本的な原因である。対立深める米中関係を修復するには、習近平を中国共産党(以下、中共)のトップの座から退場させなければならない。中共全体ではなく、党内で批判勢力との亀裂を深める習近平総書記に攻撃の的を絞るべきだ」と提言した。
この「より長い電報」と題された論文が話題を呼んでいる。これは上述のように、太平洋評議会が発表した論文であり、ジョージ・ケナンの有名な論文「長い電報」を模している。そして、その論旨は、「習近平個人を排除すべき、そうすれば中国は羊になる」ということだ。
今回、看中国に、YouTubeチャンネル・「政経最前線」(Political and economic frontline)が2月27日に行った台湾国立大学政治学部名誉教授・明居正氏へのインタビュー記事が掲載されていた。
酒楽は、明教授の意見に賛同するが、それとは関わりなく、本論文に対する意見を表明する。
まず習近平個人を排除したところで、中共が羊になるわけではないということだ。
それは支那の歴史を俯瞰すれば容易に理解できる。習近平を排除したからと言って、中共政権の性格が変わることなど考えられない。例えば習近平より李克強が良心的で平和な政策を行う、などと言うのは幻想に過ぎない。単に独裁者が変わるだけで、中共の政策はおそらく変化することはない。
中国の歴史と文化は、司馬遷の著した「史記」を読めばあらかた理解できる。史記は、支那の伝説から始まり、武帝の時代までの歴史を紀伝体で記述した歴史書である。
支那の歴史書には、そのほかに、春秋左氏伝、竹書紀年、漢書、十八史略など多数存在するが、史記がその頂点に位置すると酒楽は思う。
史記の著述の大部分は、春秋戦国時代であり、秦が崩壊した後の項羽と劉邦による楚漢攻防戦、そして漢帝国成立後の武帝までの時代を記述している。
戦国時代になって、秦が最有力になり、始皇帝が支那を統一するまでが、支那の歴史のハイライトだ。そして、「秦」が支那を統一するまでの歴史を俯瞰すると、現在の中国共産党の行動原理が理解できる。やっていることが同じだ。
支那の歴史とは、独裁者の歴史と同義だ。一人の独裁者が倒れれば、次の独裁者に代わるだけだ。それが支那の歴史の伝統なのだ。だから、習近平個人を排除したところで、問題は何も変わらない。次の独裁者が現在と同じ、対外強硬策、対外拡張戦略を採用するだろう。それが独裁国家の宿命だからだ。
今回の「より長い電報」は、支那の歴史を知らいないというべきだろう。だから、明教授が批判するのだ。
ジョージ・ケナンによる「長い電報」は非常に有名である。国際政治学者、歴史学者なら誰でも知っている名前だ。そして、彼が提唱した「封じ込め戦略」は、冷戦時代を象徴する言葉で、人口に膾炙している。
冷戦たけなわの頃、「封じ込められた」ロシア及び共産圏は、経済的に疲弊し、自由主義陣営に敗北した。酒楽が何度か言及した「対共産圏輸出統制委員会(COCOM)」が共産圏との貿易を厳格に管理し、共産圏を世界貿易から切り離し、知的財産を守り、技術的優位を確保して、経済的(最終的には軍事的)に共産圏を圧倒した、これが冷戦に勝利した理由だ。
毛沢東が亡くなり、鄧小平が復権して権力を握ったが、中共の性格は何も変わらなかった。変わったのは、毛沢東による独裁政権から、集団指導体制に移行したことくらいだ。鄧小平は、「最高実力者」とは呼ばれ、公式に国家の公のポストには就かなかった。そして、胡耀邦や趙紫陽など開明派を重用して、中国の経済成長を企図したのである。
そして、その開明政策が表面的なものだったことが、天安門事件によって明らかになった。胡耀邦も趙紫陽も勘違いしたのだ。だから両名とも鄧小平により、失脚させられた。天安門事件による人民への弾圧と虐殺が中国共産党政権の本質なのだ。それが世界に向けて発信された。
騙されたのは、米国だけではない。我が国も鄧小平に見事に騙された。事件後融和政策を採った我が国によって、中国は危地を脱したが、我が国にとっては仇となっただけだった。
(続く)
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2021年1月28日、アメリカのシンクタンク・「大西洋評議会(The Atlantic Council)」は80ページに及ぶ報告書「より長い電報:米国の新しい対中戦略にむけて」(The Longer Telegram: Toward a new American China strategy)を発表した。当報告書は「習近平が米中関係をギクシャクさせた根本的な原因である。対立深める米中関係を修復するには、習近平を中国共産党(以下、中共)のトップの座から退場させなければならない。中共全体ではなく、党内で批判勢力との亀裂を深める習近平総書記に攻撃の的を絞るべきだ」と提言した。
この「より長い電報」と題された論文が話題を呼んでいる。これは上述のように、太平洋評議会が発表した論文であり、ジョージ・ケナンの有名な論文「長い電報」を模している。そして、その論旨は、「習近平個人を排除すべき、そうすれば中国は羊になる」ということだ。
今回、看中国に、YouTubeチャンネル・「政経最前線」(Political and economic frontline)が2月27日に行った台湾国立大学政治学部名誉教授・明居正氏へのインタビュー記事が掲載されていた。
酒楽は、明教授の意見に賛同するが、それとは関わりなく、本論文に対する意見を表明する。
まず習近平個人を排除したところで、中共が羊になるわけではないということだ。
それは支那の歴史を俯瞰すれば容易に理解できる。習近平を排除したからと言って、中共政権の性格が変わることなど考えられない。例えば習近平より李克強が良心的で平和な政策を行う、などと言うのは幻想に過ぎない。単に独裁者が変わるだけで、中共の政策はおそらく変化することはない。
中国の歴史と文化は、司馬遷の著した「史記」を読めばあらかた理解できる。史記は、支那の伝説から始まり、武帝の時代までの歴史を紀伝体で記述した歴史書である。
支那の歴史書には、そのほかに、春秋左氏伝、竹書紀年、漢書、十八史略など多数存在するが、史記がその頂点に位置すると酒楽は思う。
史記の著述の大部分は、春秋戦国時代であり、秦が崩壊した後の項羽と劉邦による楚漢攻防戦、そして漢帝国成立後の武帝までの時代を記述している。
戦国時代になって、秦が最有力になり、始皇帝が支那を統一するまでが、支那の歴史のハイライトだ。そして、「秦」が支那を統一するまでの歴史を俯瞰すると、現在の中国共産党の行動原理が理解できる。やっていることが同じだ。
支那の歴史とは、独裁者の歴史と同義だ。一人の独裁者が倒れれば、次の独裁者に代わるだけだ。それが支那の歴史の伝統なのだ。だから、習近平個人を排除したところで、問題は何も変わらない。次の独裁者が現在と同じ、対外強硬策、対外拡張戦略を採用するだろう。それが独裁国家の宿命だからだ。
今回の「より長い電報」は、支那の歴史を知らいないというべきだろう。だから、明教授が批判するのだ。
ジョージ・ケナンによる「長い電報」は非常に有名である。国際政治学者、歴史学者なら誰でも知っている名前だ。そして、彼が提唱した「封じ込め戦略」は、冷戦時代を象徴する言葉で、人口に膾炙している。
冷戦たけなわの頃、「封じ込められた」ロシア及び共産圏は、経済的に疲弊し、自由主義陣営に敗北した。酒楽が何度か言及した「対共産圏輸出統制委員会(COCOM)」が共産圏との貿易を厳格に管理し、共産圏を世界貿易から切り離し、知的財産を守り、技術的優位を確保して、経済的(最終的には軍事的)に共産圏を圧倒した、これが冷戦に勝利した理由だ。
毛沢東が亡くなり、鄧小平が復権して権力を握ったが、中共の性格は何も変わらなかった。変わったのは、毛沢東による独裁政権から、集団指導体制に移行したことくらいだ。鄧小平は、「最高実力者」とは呼ばれ、公式に国家の公のポストには就かなかった。そして、胡耀邦や趙紫陽など開明派を重用して、中国の経済成長を企図したのである。
そして、その開明政策が表面的なものだったことが、天安門事件によって明らかになった。胡耀邦も趙紫陽も勘違いしたのだ。だから両名とも鄧小平により、失脚させられた。天安門事件による人民への弾圧と虐殺が中国共産党政権の本質なのだ。それが世界に向けて発信された。
騙されたのは、米国だけではない。我が国も鄧小平に見事に騙された。事件後融和政策を採った我が国によって、中国は危地を脱したが、我が国にとっては仇となっただけだった。
(続く)
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