プライベート・ライアン
読者の皆様は、プライベート・ライアンという映画をご存知でしょうか。御存じない方もいらっしゃるでしょうから、冒頭にWikiから映画「プライベート・ライアン」の説明を引用しました。
この映画をご覧になられた方は知っているでしょうが、見ていない人ために一言、このプライベート・ライアンとは、ライアン二等兵という意味です。二等兵は、軍隊では最下級の兵士です。
この映画では、冒頭にライアン二等兵の実家に軍の使者が訪れるところから始まります。そして、使者は、ライアン兄弟の母に、息子3人の戦死を伝えたのです。母は、その場に崩れ落ちました。何とも悲しいプロローグから映画が始まったのです。
若干の余談を。そしてそれを伝え聞いたアメリカ合衆国陸軍参謀総長マーシャル大将(後元帥)は、残った一人の兄弟を探し出して連れ戻すように軍に命令するのです。映画は、生き残った最後の一人、ライアン二等兵を救出する物語なのです。
さて戻ります。読者の皆様は、この前置きと表題を見て、究極の任務とは、ライアン二等兵を救出することだと思われたことでしょう。申し訳ありませんが違います。本記事では、家族に、夫または子息の戦死を告げる任務のことを意味しています。
なぜそういう話をするかというとですね、酒楽はかつて、部下(以下A君)が戦死した際に、家族にその死を伝える任務を受けたことがあるからです。結論を言えば、任務は遂行されませんでした。A君は、無事戦場から生還したからです。
いったい、いつ、陸上自衛隊は戦場に行ったのだ?というのは当然の質問ですね。それはイラク復興支援です。何だ、戦争じゃないではないか。そうですね、戦争ではありません。しかし、復興支援を行った当時のイラクは、戦争が終わったと言っても、未だ治安が回復したわけではありませんでした。
復興支援の間、何度もロケット弾の攻撃を受けたことも事実です。派遣された隊員が、戦死してもおかしくはなかったのです。
A君は、選抜されてそのイラクに派遣されました。本人も希望していました。酒楽は反対しましたが。
そして、派遣されてしばらくすると酒楽は上司に呼ばれたのです。そしてこう命ぜられたのです。「Aが死んだら、お前(酒楽のことです)は速やかに奥さんにその事実を伝えろ。誰よりも早く。メディアの発表の前にだ。」という任務だったのです。
これはですね、当然のことなのです。たとえば、御主人が戦死されたことをテレビで知ることになったら、奥様は、自衛隊を疑うでしょう。何故、もっと早く知らせてくれなかったのだと。当然ですよね。テレビを見ていて、あるいは、お隣の奥さんから、「Aさん、旦那様が戦死したみたいよ、テレビ見た?」なんてことになったら、自衛隊に対する信頼は地に堕ちるでしょう。だから、誰よりも早く部隊から家族に知らせる必要があるのです。
その任務が酒楽に下されたのです。計画は作りました。A君の家まで、最短、最速で行く手段、時間を複数経路選択し、状況に応じて、様々な手段を駆使して、A君の家に行く計画を、です。
でもですね、酒楽にとって難題は、移動計画ではなく、どうやって奥様に説明するのかの方が重要でした。何と言って伝えたらいいのか?これは究極の任務です。結局、計画は発動されることはなく、幻の任務となりました。どう伝えるべきなのかについて、成案を得ることはできませんでした。
プライベート・ライアンは、数年前、テレビで見たのですが、途中でいたたまれなくなり、最後まで見ていません。でも、こういう家族の戦死にまつわる任務ほどつらい任務はありませんね。酒楽はですね、元自衛官ですから、お国のために身の危険を顧みず、職務に専念することを誓っているので、それについては覚悟ができておりました。しかし、部下の死を伝える任務は、全く想定していなかったので、これほど困難な任務はないと思った次第です。任務は遂行されることが無かったので、本当に良かったと今でも思います。
老兵の思い出話です。お付き合いいただき、ありがとうございます。

蛇足です。これはベトナム戦争で海兵隊が使用した認識票です。認識票は身に着けます。戦死したときに、誰だか分かるようにです。これが戦場のリアルというものです。陸自認識票を引用する気にはなりませんでした。当然ですが。
読者の皆様は、プライベート・ライアンという映画をご存知でしょうか。御存じない方もいらっしゃるでしょうから、冒頭にWikiから映画「プライベート・ライアン」の説明を引用しました。
この映画をご覧になられた方は知っているでしょうが、見ていない人ために一言、このプライベート・ライアンとは、ライアン二等兵という意味です。二等兵は、軍隊では最下級の兵士です。
この映画では、冒頭にライアン二等兵の実家に軍の使者が訪れるところから始まります。そして、使者は、ライアン兄弟の母に、息子3人の戦死を伝えたのです。母は、その場に崩れ落ちました。何とも悲しいプロローグから映画が始まったのです。
若干の余談を。そしてそれを伝え聞いたアメリカ合衆国陸軍参謀総長マーシャル大将(後元帥)は、残った一人の兄弟を探し出して連れ戻すように軍に命令するのです。映画は、生き残った最後の一人、ライアン二等兵を救出する物語なのです。
さて戻ります。読者の皆様は、この前置きと表題を見て、究極の任務とは、ライアン二等兵を救出することだと思われたことでしょう。申し訳ありませんが違います。本記事では、家族に、夫または子息の戦死を告げる任務のことを意味しています。
なぜそういう話をするかというとですね、酒楽はかつて、部下(以下A君)が戦死した際に、家族にその死を伝える任務を受けたことがあるからです。結論を言えば、任務は遂行されませんでした。A君は、無事戦場から生還したからです。
いったい、いつ、陸上自衛隊は戦場に行ったのだ?というのは当然の質問ですね。それはイラク復興支援です。何だ、戦争じゃないではないか。そうですね、戦争ではありません。しかし、復興支援を行った当時のイラクは、戦争が終わったと言っても、未だ治安が回復したわけではありませんでした。
復興支援の間、何度もロケット弾の攻撃を受けたことも事実です。派遣された隊員が、戦死してもおかしくはなかったのです。
A君は、選抜されてそのイラクに派遣されました。本人も希望していました。酒楽は反対しましたが。
そして、派遣されてしばらくすると酒楽は上司に呼ばれたのです。そしてこう命ぜられたのです。「Aが死んだら、お前(酒楽のことです)は速やかに奥さんにその事実を伝えろ。誰よりも早く。メディアの発表の前にだ。」という任務だったのです。
これはですね、当然のことなのです。たとえば、御主人が戦死されたことをテレビで知ることになったら、奥様は、自衛隊を疑うでしょう。何故、もっと早く知らせてくれなかったのだと。当然ですよね。テレビを見ていて、あるいは、お隣の奥さんから、「Aさん、旦那様が戦死したみたいよ、テレビ見た?」なんてことになったら、自衛隊に対する信頼は地に堕ちるでしょう。だから、誰よりも早く部隊から家族に知らせる必要があるのです。
その任務が酒楽に下されたのです。計画は作りました。A君の家まで、最短、最速で行く手段、時間を複数経路選択し、状況に応じて、様々な手段を駆使して、A君の家に行く計画を、です。
でもですね、酒楽にとって難題は、移動計画ではなく、どうやって奥様に説明するのかの方が重要でした。何と言って伝えたらいいのか?これは究極の任務です。結局、計画は発動されることはなく、幻の任務となりました。どう伝えるべきなのかについて、成案を得ることはできませんでした。
プライベート・ライアンは、数年前、テレビで見たのですが、途中でいたたまれなくなり、最後まで見ていません。でも、こういう家族の戦死にまつわる任務ほどつらい任務はありませんね。酒楽はですね、元自衛官ですから、お国のために身の危険を顧みず、職務に専念することを誓っているので、それについては覚悟ができておりました。しかし、部下の死を伝える任務は、全く想定していなかったので、これほど困難な任務はないと思った次第です。任務は遂行されることが無かったので、本当に良かったと今でも思います。
老兵の思い出話です。お付き合いいただき、ありがとうございます。

蛇足です。これはベトナム戦争で海兵隊が使用した認識票です。認識票は身に着けます。戦死したときに、誰だか分かるようにです。これが戦場のリアルというものです。陸自認識票を引用する気にはなりませんでした。当然ですが。
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